レポート:COP26での出来事と労働者にとっての意味

2021年12月15日

COP26は2021年11月1-13日に開催され、グラスゴー気候合意を取り決めた。何が盛り込まれており、それは労働者にとって何を意味するのだろうか。

レポート

『グローバル・ワーカー』第2号(2021年11月)より

テーマ:COP26、公正な移行

文:ウォルトン・パントランド

COP26とは?

COP26は国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第26回締約国会議である。締約国はUNFCCCに署名している197カ国で、気候変動に立ち向かうための世界的な多国間協定に一体となって取り組んでいる。

UNFCCCの初会合であるリオデジャネイロ地球サミットは1992年にブラジル・リオデジャネイロで、第1回COP(UNFCCCの統治機関)は1995年にベルリンで開催された。京都で開かれたCOP3において、温暖化を制限しようとする初の世界的な気候条約、京都議定書がまとめられた。グラスゴー気候合意は、その条約の最新版である。

UNFCCCプロセスについては多くの批判がある。主な問題は、すべての締約国が、何か手を打たなければならないことを認識しており、他のすべての国々に行動を求めておきながら、自国には例外を見つけようとしていることである。その結果、炭素排出量の組織的過小報告、グリーンウォッシング、軍など分野全体の適用除外が見られる。

ほとんどの政府が依然、市場主導の民間部門による解決策を望んでおり、その結果、理論的技術の可能性を重視するあまり、政府による措置が不十分になっている。

なぜCOP26は重要だったか?

COP26は、地球温暖化を許容水準に抑える最後の、そして最善の機会と評された。2015年にパリで開催されたCOP21は、2℃を大きく下回る水準に温暖化を制限するという世界的な取り組み、パリ協定の締結に至った点で画期的であった。COP26が重要だったのは、パリ協定を管理するルール(「パリルールブック」)を仕上げ、排出削減のために各国が自主的に決定する約束(NDC)を定めなければならなかったからである。

COP26は失敗だったのか?

グレタ・トゥーンベリをはじめとする多くの環境活動家が、COP26を失敗と呼んでいる。グラスゴー気候合意は野心に欠けており、締約国のNDCは地球温暖化を制限するのに十分ではない。だが、それだけの話ではなく、組合は慎重に楽観的である――トランプがまだホワイトハウスにいた1年前の状況に比べれば、大きな進歩があった。壊滅的な気候変動を防止するチャンスはまだあり、勢いが強まっており、移行資金の供給が約束されている。

決定的なことに、交渉はまだ終わっていない。来年シャルム・エル・シェイクで開催されるCOP27において、そしてその後も毎年、各国にNDCの再定義を求める圧力がさらに強まっていくだろう。労働組合を含む市民社会は、今後1年間に可能な限り各国政府に圧力をかける必要がある。

COP26の取り組みの枠外でも、民間部門や地方政府などから、ネットゼロに向けた勢いが全世界で強まっている。技術が進歩してコストが安くなっており、これは移行のペースが急速に高まっていることを意味する。

COP26は組合にどのような影響をもたらす可能性があるか?

COP26の結果、政策環境がCOP25後とは大きく変わっている。以下、組合が直面すると予想される状況を列挙する。

石炭の終焉

エネルギーミックスにおいて石炭が果たす役割は、COP26で最も熱心に討議された主題の1つであった。石炭火力発電所は地球温暖化の大きな要因であり、まだ多くの国々がエネルギー需要を満たすために石炭に依存している。協定の当初の文言、石炭の「段階的廃止」は、中国とインドから圧力を受けた結果、「段階的縮小」に和らげられた。それでもなお、意図は明確である――締約国は、石炭に長期的な未来はなく、炭鉱閉鎖を求める圧力が全世界で強まっていくという点で意見が一致している。組合にとって、炭鉱と石炭火力発電所を維持するための闘いは、歴史の流れに逆らう闘いである。英国やスペインなどの組合は、再訓練と配置転換を何とか確保することができた。これを規準にするために闘う必要がある。

公正な移行への取り組み

今回のCOPで目立った労働組合スローガンは、「私たち抜きに私たちのことを決めるな」である。組合は、すべてのレベルで公正な移行の原則をうまく促進した。このCOPの重要な結果は公正な移行への取り組みの強化であり、これは今パリルールブックに盛り込まれている。富裕国が発表した公正な移行宣言は、持続可能性への移行は最も影響を受ける人々との協議を通して進めなければならないという重要な先例となる。

労働組合は、COP協定の公正な移行に関する文言を利用して、今すぐ国家レベルで社会的対話を要求することができる。グローバル・ユニオンは、移行計画について多国籍企業との社会的対話を要求することもできる。

政府の復帰

1970年代後半以降、世界の多くの国々が国家主導の開発から脱却し、規制撤廃、民営化、脱工業化、市場先導型の開発に移行した。これは組合からの強い抵抗に遭い、不平等の拡大をもたらして2008年の金融破綻のような危機を招いた。COVID-19で、市場を基盤にパンデミックを解決する方法がないことが直ちに明らかになったため、完全にイデオロギー的に緊縮財政に取り組んでいた政府でさえ、前例のない国家支出に舵を切らざるを得なかった。

各国政府が気候変動に取り組んでいるため、この前例のないレベルの国家介入と資金供給は維持されそうである。巨額の資金が投資されるにしてもなお、気候災害を防止するほうが、その結果に対処するよりも大幅に安くすむだろう。

相乗効果もありそうで、国家が投資すれば民間部門もあとに続く傾向がある。世界の歴史上初めて、投資がグローバルに調整され、規模の経済をもたらす。

グローバルサウスを脱炭素化するための資金供給

富裕国はパリで、気候変動の影響を緩和して経済の脱炭素化を支援するために、年間1000億ドルをグローバルサウスに供給することを誓約した。これまでのところ、富裕国はこの誓約を守っていない。それにもかかわらず、多額の資金――融資ではなく補助金――が貧困国に流入し始めている。

重要な先例は、南アフリカの半官半民の石炭エネルギー会社エスコムを脱炭素化するために、85億ドルが充当されたことである。資金供給国は公正な移行に取り組んでおり、このプロセスは三者構成機構Nedlacを通じた社会的対話により管理される。南アフリカの組合は、腐敗やグリーンウォッシング、民営化、その他いくつかの問題について、もっともな懸念を抱いている。しかし、この取引は予定どおりにいけば、良質でクリーンな雇用の創出、技能・技術移転、大幅な排出削減につながる可能性がある。南アフリカが成功を収めれば、他の国々、特にインドのように石炭依存度の高い国でも資金供給が増えることになる。

グローバルノースのグリーンディール

富裕国は、グリーンインフラの建設に巨額の資金を投入する。例えば欧州グリーンディールは、COVIDからのグリーンリカバリーに資金を供給するために、2030年までに1000億ユーロを提供する。これには新しい輸送インフラ、住宅・建物の改造、グリーンエネルギー生成などが含まれる。欧州委員会は、これによって数十万人の雇用が供給されると予想している。

同様に米国でも、バイデンの1兆米ドルのインフラ法案で、グリーンインフラに多額の資金が投入される。その他のOECD諸国も、同水準の投資を計画している。

組合はどう対応すべきか?

「COVIDが気に入ったなら、気候変動も大好きになるだろう!」

COVID危機は気候変動の舞台稽古だった。パンデミックを抑えて人命を救うために、前例のない行政措置と資金供給、グローバルな調整が必要になっている。気候変動に対抗するために、このような取り組みを続ける必要がある。

社会的対話の要求と公正な移行を求める闘い

私たちは組合員を迫り来る変化に備えさせる必要がある。各国政府が必要な措置を講じていないことを批判するのは簡単だが、私たち労働運動関係者も、気候危機を軽視し、なくなればよいと思うだけという罪を犯している。化石燃料部門の雇用は賃金が高く、労働組合の力の源泉であるため、私たちはそれらの雇用の保護を優先させている。今や化石燃料からの移行に全世界が取り組んでいる。いくつかの国の組合は、公正な移行を求めて闘い、それを勝ち取る経験を積んでいる。最良の例から学び続ける必要がある。

COP26代議員のダイアナ・ジュンケラ・キュリエル・インダストリオール・エネルギー担当部長は言う。

「未来を押しつけられるよりも、自分たちで未来を設計するほうがいい」

「私たちがこれらの雇用を無期限に守れると組合員に信じさせるよりも、組合員に対して正直になり、将来に備えるために手助けしなければならない。私たちの緊急の任務は、社会的対話を通して実施できる公正な移行の具体的な枠組みを開発することだ」

公正な移行はパリルールブックに盛り込まれているが、多くの政府にとって、経済政策に関する社会的対話は自然に起こるものではない。国がNDCを改善して移行を計画するにあたり、討議に参加できるよう要求するのは組合の責務である。これを効果的に実行すれば、経済の他の分野で先例を作り、三者構成機構と部門全体交渉を生み出すことができる。

シナリオの変更

労働者と組合は当然ながら、素晴らしい公正な移行は良質のクリーンな組合雇用というグリーンユートピアを創出する、という高尚な主張を疑っている。19世紀初めに織工に取って代わった繊維機械の開発から、外部委託と大規模失業を招いた1990年代のグローバル化に至るまで、歴史上、世界経済の大きな変化はすべて労働者を犠牲にしてもたらされた。

なぜ今回は違うと信じるべきなのか?

政治家任せにしていたら何も変わらない。だが、私たちが移行の推進に関与すれば、違うものになる可能性がある。私たちは世界経済の前例のない変動――化石燃料時代の終焉と、まだ定義されていない新時代の幕開け――に直面している。これまでの変化とは異なり、これは管理されたプロセスであり、組合が政策に影響を与える余地がある。

世界各国の政府が過去に例のない金額を支出する。この支出が組合員に良質な雇用を提供し、その過程で私たちがよりよい世界を構築するようにするのは、私たちの責務である。