新型コロナウイルス:世界の繊維衣料産業における対応

新型コロナウイルス:世界の繊維衣料産業における対応

2020422日 最終版)

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我々の出発点

この声明を承認する組織は、新型コロナウイルスの危機において、衣料産業の労働者の収入、健康と雇用を守り、使用者の存続を支援することを約束する。そして、より公正で回復力の強い衣料産業を目指し、社会的保護の持続的な仕組み作りに向け、協力することを約束する。  

そのためには、全ての関係者‐政府、銀行及び金融機関、国際団体、ブランド及び小売業者/Eコマース、製造業者、使用者団体、労働組合、その他のステークホルダーと開発パートナー‐が早急に協力し、組織的役割に沿って、現実的で個別具体的な措置を確立し、(以下に記す)優先事項を実行しなければならない。

 

我々の優先順位

 

  1. 政府及び金融機関に対し、信用貸し、失業給付及び収入保証、無利子もしくは低利子の短期ローン、免税、納税の猶予、財政刺激策、その他の支援へのアクセスを迅速化するよう要求する。

     2. 事業主、ブランドと造業者の両方が事業の存続への未曾有の影響に直面し、環境が大きく変化しており、それに よって労働者や個人の賃金・収入に多大な影響を与えうることを認識し、この文書を承認する組織は、緊急救済基金、信用貸し、短期ローンを通じて労働者と個人に早急な収入保証を行うために、迅速で革新的な資金の動員を支援するよう金融機関、政府、ドナーに働きかけることを約束する。税制、社会保障費、一時的失業プログラムなど様々な手段を通じ、雇用を維持するための社会保護スキームと支援行動の確実な実施のための支援も必要である。我々は、サプライヤーが活動を維持できるようこれらの資金へのアクセスを強力に支援する。これは、長引く危機の期間すべてにわたり、労働者の雇用と収入を緊急優先するために不可欠である。

    3. 国内法、団体協約その他、危機に対応するために実施されている収入支援、雇用維持スキームに従い、雇用契約にかかわらず全ての労働者への賃金支払いを含め、製造業者が事業を継続できるよう資金が使用されなければならない。

ブランド及び小売業者は、そのサプライチェーンにおけるCOVID-19の悪影響を抑えるために以下を含む様々な行動をとることを約束する。

        a.製造済みの完成品および仕掛品の費用を製造業者に支払う

        b.事業の状況と今後の計画についてサプライチェーンのパートナーと迅速・効果的で常時連絡可能なコミュニケーション網を維持する。

       c. 財政状況が許せば、工場への直接的な支援を検討することができる。

 

    4.  ILO中核的労働基準と職場の安全衛生の尊重を促進する。

    5. 危機の影響に対応するために至急取り組むべき対策を進めるためには、各団体と手を携えながら、持続可能な社会保護制度と社会サービスの公共インフラを強化しなければならない。これは、回復力を強化し、社会が即座に危機に対応し、今後起こりうる危機の影響を緩和するために不可欠である。したがって、本声明を承認する組織は、それぞれの役割に従い、持続可能な制度に寄与するため経時的にすべての関係者の責任を確立すべく、ILO第202号勧告(社会保護の土台に関する勧告)に則り、社会保護の基盤の強化と衣料産業労働者と使用者への社会保護拡大を支援することを誓う。

我々の現状

現状、近年では前代未聞の状況であり、世界的な規模で産業や国々に影響を及ぼしている。衣料品の需要の急落は、COVID-19感染拡大を防ぐための政府措置の直接的な結果である。こうした措置は、大規模な小売店の閉鎖、従業員の解雇や一時休業、強制的な工場閉鎖、産業横断的な解雇を引き起こし、消費者の需要は減退し、消費意欲と消費者の安心を損なった。こうした要因が重なり、世界的な衣料品バリューチェーンでの発注停止につながった。結果、いくつかのブランド、小売業者、サプライヤーは、労働者への支払いができなくなり、事業継続に関して短期、中期、長期的な金銭的不安を抱えている。

医療制度や社会的保護制度の脆弱な国においては、労働者への支払いが滞ると、何百万人もの人々が即座に貧困に陥る能性があり、COVID-19の急速な拡大から労働者と人々を守るための対策が機能しなくなる可能性がある。賃金の支払いを保証し、雇用を維持出来るよう使用者への早急な支援が必要とされている。

衣料品の需要回復がいつになるのか見通しは立たず、どのような形・範囲・規模で衣料品のバリューチェーンの操業が回復し、いつ安全な労働環境で製造を再開できるのかは分からない。衣料産業の多くの製造業者は政府の支援、その他の開発資金がなくては事業が継続できないことを我々は認識している。既に工場の閉鎖、労働者の解雇や一時休業が始まっている。この状況下で我々は労働者と使用者を守り、製造業者が事業を継続し、事態回復の過程で従業員を職場に戻すことができるようにしなくてはならない。

パンデミックと経済危機が世界的な現象となる中、衣料産業の経済的打撃の速度と規模は、この産業の事業と雇用の脆弱さを明らかにした。これは、医療制度や社会的保護の脆弱な国や企業がこの種を対象とした保険にほとんど加入していない場合において特に深刻である。このような状況で、多くの弱い立場の労働者とその家族が即座に貧困に陥る可能性があり、過去数十年の発展が後退する可能性がある。同様の危機は今後も起こる可能性があり、関係者は協力し、将来、労働者と企業を守ることのできるより強い仕組みを構築しなければならない。これは全ての産業の関係者、政府、支援を提供する資金援助団体や開発組織の共通の関心事である。

最も弱い人々を守るための我々の対応

我々の行動は、医療制度と社会的保護制度の最も弱い国の労働者と使用者および就業上、安全衛生確保のために特別な対策が必要とされる人々の保護に焦点を当てる。優先すべき国は、現状実施されている社会的保護の内容の最新の専門的な分析をもとに決定する。例えば、財政的支援、法的保護や任意の保護の実施状況である。

次のステップ

上記の約束を実行するための実施ステップを更に策定するために、2週間以内に国際作業グループを設置する。同作業グループはILOにより招集され、IOEとITUCが調整を行い、ブランド、製造業者、労働者及び使用者団体、政府が含まれる。