ILOの役割
2023年5月31日
国際労働機関(ILO)の使命は、社会的公正は普遍的・永続的平和に必要不可欠であるという創立原則に基づいて、社会的公正と国際的に認知された人権・労働権を促進することである。
第1次世界大戦を終結させたベルサイユの条約の一部として1919年に設立されたILOは、唯一の三者構成国連機関であり、187の加盟国の政府、使用者および労働者代表をまとめている。
国際労働事務局(ILO事務局)は、スイス・ジュネーブの本部と世界約40カ国で、150カ国から約2700人を雇用している。その活動を運営しているのは事務局長と、加盟国、労働者グループおよび使用者グループの代表が加わるILO理事会である。
ディーセント・ワーク・アジェンダ
ILOは使命の一環として、社会的対話と社会的保護、雇用創出、それに国際労働基準の尊重の促進によって、万人のためのディーセント・ワークを達成することも目指している。ILOは、開発パートナーの支援を受けて100カ国以上に技術サポートを提供し、これらの目的を達成できるようにしている。
国際労働基準
ILOは、加盟国が批准する条約と拘束力のない勧告によって国際労働基準を定めている。
条約は、ILOの政府、労働者および使用者グループから情報を得て作成され、毎年ジュネーブで開かれるILO総会で採択される。
加盟国はILO条約の批准にあたって、その条約を法的拘束力のある文書として受け入れる。多くの国々が、国内法を国際基準と調和させるための手段として条約を利用している。
労働における基本的原則および権利に関するILO宣言
1998年採択・2022年修正の同宣言は加盟国に、関連条約を批准しているか否かを問わず、以下の5つのカテゴリーで8つの基本的原則および権利の尊重・促進を義務づけている。
- 結社の自由と団体交渉権(第87号および第98号条約)
- 強制労働の撤廃(第29号および第105号条約)
- 児童労働の撤廃(第138号および第182号条約)
- 雇用および職業に関する差別の撤廃(第100号および第111号条約)
- 安全で健康的な労働環境(第155号および第187号条約)
ILOにおける労働組合
労働者グループ代表は全国労働組合総連合から選ばれるので、労働組合はILOでの政策立案に重要な役割を果たす。事務局の労働者活動局(ACTRAV)は、独立した民主的な労働組合の強化に専念し、組合が労働者の権利・利益をよりよく擁護できるようにしている。
ACTRAVが作成した労働者ガイドは、ILO監督機関が確立した結社の自由に関する原則の概観を提供し、ILOの手続きを利用して結社の自由を確保・促進する最善の方法を理解するのに役立つ。
監督者としてのILOの役割
ILOは加盟国が批准したILO条約の実施を監視する。これは国際労働基準の遵守状況を監視するILO条約勧告適用専門家委員会を通じて行われる。自国が批准済みのILO条約に従わない加盟国に対して、苦情を申し立てることができる。申し立ては政府に対してのみ行うことができ、毎年夏のILO総会で審理される。
監視は条約・勧告の適用に関するILO総会三者委員会を通じても行われる。
加盟国は、自国が批准した条約の実施の進展に関する報告書の提出も義務づけられる。
苦情
自国が批准済みのILO条約に従わない加盟国に対して、苦情を申し立てることができる。申し立てを行うことができるのは、同じ条約に署名している別の加盟国、ILO総会の代議員またはILO理事会である。
労働組合は苦情処理手続きとILO総会を利用して、加盟国における労働組合・労働者の権利侵害への注意を喚起している。
ILO多国籍企業および社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)の枠内で、ILOは、多国籍企業宣言の原則の適用をめぐる多国籍企業と労働者代表による対話「企業・労組間対話」を支援する手続きを定めている。
詳細はwww.ilo.orgを参照