新型コロナウイルス感染症――緊急経済対策と職場対応が必要

2020年3月12日

グローバル・ユニオン評議会共同声明

新型コロナウイルス感染症の急速な拡大を受けて、健康を保護して経済を刺激するために世界規模の緊急対応が必要となっている。政府・使用者は、労働者を保護して職場における感染に取り組むために措置を講じなければならない。

国際通貨基金(IMF)は、新型コロナウイルス感染症は2008年の景気後退のような経済恐慌を引き起こすおそれがあると警告している。各国政府が国際機関を通して協調的に行動し、景気を下支えして雇用を維持する必要があることは明白である。世界経済は、実体経済と労働者、中小企業に効果を及ぼし、雇用と生活、地域社会を優先する景気刺激策を必要としている。パートタイム労働者、移民労働者、非居住労働者、不安定労働者、「ギグ」労働者、インフォーマル労働者など、すべての労働者向けの所得補助が不可欠である。

労働者は、新型コロナウイルスが経済や社会、健康に及ぼす影響を最も大きく受けている。労働者を保護できなければ感染がさらに拡大する。特別な対策を講じ、有給病気休暇の取得権を持たない労働者が直ちに有給休暇を取得できるようにするとともに、病気休暇規定がある場合はさらに改善し、保護を提供する労働条件や取り決めを確保しなければならない。

プラットフォーム企業に雇用を頼っている労働者が社会的保護を受け、プラットフォーム企業自体が出資する資金から補償を得られるようにすべきである。

世界は差し迫った危機に直面しており、この危機は非常に大きなものになる可能性がある。インフラや公衆衛生が不十分な最貧国にウイルスが蔓延すれば、数億人に壊滅的な影響を与える危険がある。さらに、新型コロナウイルスが医療制度に加える大変な重圧は、新たな公衆衛生問題を引き起こす可能性が高い。

あらゆる部門の労働者がリスクにさらされているが、真っ先に緩和・治療ニーズの矢面に立たされるのは医療労働者である。多くの国々で医療への資金供給が不十分であったり、国民が医療を受けられない状態にあったりし、医療制度が最も充実している部類に入る国でさえ、新型コロナウイルスは圧倒的な影響を及ぼす可能性がある。グローバルな対応は、これを前面に押し出さなければならない。

ウイルスの影響が広がる中で、労働者の健康と職場における権利を保護するには、政労使対話や団体交渉が極めて重要である。

各国政府は、この難題に立ち向かって現下の危機に取り組み、将来の感染危機に対応して防止しなければならない。労働者と職場はこの中心となる。

全世界で2億人の労働者を代表しているグローバル・ユニオン評議会(CGU)は、各国政府に以下のとおり要求する。

  • 雇用形態に関係なく、すべての労働者(フォーマル労働者、「ギグ」労働者、不安定労働者、インフォーマル労働者を含む)に、直ちに有給休暇取得権を拡張し、所得を維持し、社会的保護を広げる。
  • 雇用と経済を支えるために国の歳出による景気刺激策を実施し、賃金と労働者の福祉、中小企業を守る。
  • 国際機関と協力・協働しながら、新型コロナウイルスがもたらす脅威に十分対応できない国々への援助を拡充し、多国間金融機関が各国のニーズを評価して適切に対応するよう確保する。

CGUは使用者に以下のとおり要求する。

  • 労働組合を承認して交渉を行い、労働者の健康や権利、福祉に対する脅威を確認するとともに、職場での対応を立案・実施する。
  • 自社の事業およびサプライチェーンの全労働者に対する注意義務を認識して遂行するとともに、サプライヤーとの契約を維持し、新型コロナウイルスがもたらす脅威への対応にあたって、これらの労働者の権利と福祉を優先させる。
  • 新型コロナウイルスの脅威を確認・防止・緩和・説明するプロセスや、使用者・政府による対応の評価に労働者代表を参加させる。
  • 健康保護と保健計画が導入され、例外なく遵守されるよう確保する。
  • 団体交渉で相互に合意した多様な手段によって、すべての労働者の賃金と全額支給を保護する。
  • 新型コロナウイルスの脅威にさらされた労働者や感染した労働者に、疾病手当または休日給与の形で、休暇初日から有給休暇を保証する。
  • 新型コロナウイルスとその対策の悪影響を受ける全労働者(非標準的形態の雇用に就く労働者や契約労働者を含む)向けの補償基金を設立する。
  • すべての労働者に、各人に合わせた責任ある職場と勤務形態を提供する。

 

すべての労働者、特に医療サービス提供者に、必要に応じて無料の医療検査、治療、訓練、訓練設備・施設を提供すべきである。特に影響を受けやすい人が多い移民労働者の状況に、特別な注意を払わなければならない。新型コロナウイルスがもたらす脅威への対応の一環として健康診断その他の検査を受ける際に、労働者のプライバシーや個人情報を保護しなければならない。地方・全国レベルの封じ込め措置が原因で労働者が金銭的に、あるいは実際問題として出勤できない場合は、可能な限り早く通常の職場に戻れるようにしなければならない。

  • グローバル・ユニオン評議会の構成組織は、国際建設林業労働組合連盟、教育インターナショナル、国際ジャーナリスト連盟、国際芸術エンターテインメント同盟、インダストリオール・グローバルユニオン、国際運輸労連、国際労働組合総連合、国際食品関連産業労働組合連合会、国際公務労連、OECD労働組合諮問委員会、UNIグローバルユニオンである。
  • 画像:駅と地下鉄車両を消毒するニューヨーク市の鉄道労働者(アンドリュー・キャシン/MTAニューヨーク・シティー・トランジット)