韓国で退行的労働法に対する全国デモ

2020年11月18日

11月14日に韓国全土で何万もの労働者がデモを実施、韓国の労働殉教者チョン・テイルの自己犠牲から50周年を記念して、文在寅政権に退行的な労働法改正の撤回と「チョン・テイル法」の制定を要求した。

インダストリオール加盟組織の韓国金属労組(KMWU)は、韓国民主労総(KCTU)傘下の姉妹組合とともに全国でデモや行進に加わり、首都ソウルで26回、各地で13回の集会を開いた。

ソウルでは、ガイドラインに従って、それぞれの街頭行進に99人の組合員だけが参加し、他の組合員は十分な距離を保って歩道で後に続いた。しかし警察は、「組合員が街頭行進に加わろうとするかもしれない」という仮定に基づき、公共の歩道で労働者の移動を妨害し、シールドで労働組合員の集団を包囲したため、組合員たちはソーシャルディスタンスを維持できなかった。

警察は隔離措置にも違反し、大勢の制服警官と私服警官を集中的に投入してデモ参加者を押し返した。

ピンクの看板:退行的な労働法改正に抵抗しよう! 緑の看板:すべての労働者に労働組合権を!

インダストリオール執行委員のキム・ホギュKMWU委員長は組合員に対し、韓国の全労働者の権利を求めて立ち上がるよう促している。

「韓国における民主的な労働者運動の歴史は、労働法改革をめぐる闘いと言っても過言ではない。この闘いは50年前、チョン・テイルが労働法のコピーを持って焼身自殺したときに始まった。ILO中核的条約批准とのバーターとしての政府による労働組合法改正は、労働組合を弱体化させ、労働組合の看板だけを残そうとしている」

「私たちは10年前『チュ・ミエ』労働法改正の阻止に失敗した。現在、数々の制約を課せられ、複数の組合交渉機構がある。だが私たちには、まだ闘争と抵抗の精神がある。団結しなければならず、力を合わせてこれに立ち向かわなければならない」

韓国は基本的労働組合権を繰り返し侵害しているため、EU自由貿易協定の「貿易と持続可能な開発に関する章」の効果に関する最初の試金石となっている。

労働者の権利をめぐる韓国とのEUの紛争処理は2018年に開始、2019年に専門家パネルに持ち込まれ、組合は人権組織と協力して同パネルにアミカス・クリエ意見書を提出した。しかし、韓国国会の環境労働小委員会による法案の最終的仕上げが2020年11月30日に予定されており、パネルの報告が再三にわたって延期されているため、報告書の提出は改正内容に関する小委員会交渉の結果を待ってからになりそうである。

この改正は、結社の自由の原則の侵害だけでなく、三者構成のILO結社の自由委員会による既存の勧告にも取り組んでいない。例えば、不安定労働者のための団体交渉促進、使用者の不当労働行為を十分に抑止する制裁、結社の自由の原則に従わせるための刑法第314条(営業妨害)改正などである。

全国労働者集会では、政府に2020年6月30日の労働法改正の撤回を求めると同時に、チョン・テイルの精神も偲んだ。チョン・テイルは、労働者の権利を利用しようとしたが果たせず、自分の体に火をつけ、「私たちは機械ではない!」「私の死を無駄にしないで!」と叫びながら工場地区を走り回ったあと死亡した。

解散後のソウルの集会会場で「チョン・テイル3法」と題する本を持つチョン・テイル像

労働組合は「チョン・テイル3法」を提案し、請願によって議会に法案を提出するために、9月に10万人以上の署名を集めた。とりわけ、「労働者」の定義を広げて不安定労働者も労働組合権を利用できるようにするとともに、抜け穴の「例外」をなくし、従業員4人以下の小企業にも最低基準・保護を適用できるようにすることを提案している。

国会本会議の環境労働委員会は11月12日、チョン・テイル3法案を小委員会に付託して審議にかけることを決定した。

組合は、自社の製品や生産プロセスに起因する産業災害や集団的死亡を招いている状況の是正を怠る企業に責任を負わせる法案を提出するためにも、10万人を超える署名を集めた。法案の人気にもかかわらず、与党は競合案の提出を決定した。

ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は言う。

「インダストリオールは、退行的な法案と闘う韓国の加盟組織と連帯している。韓国国会に対し、改正案の即時撤回を要請する。その代わりに韓国は、以前の約束に従ってILOの基本条約を批准しなければならない」

「インダストリオール・グローバルユニオンは2019年5月の執行委員会決議に沿って、引き続き韓国の加盟組織を支援していく」