南アジアの組合、普遍的な社会的保護の強化を要求

2021年4月9日

南アジアのインダストリオール加盟組織は、COVID-19に起因する社会的危機を悪化させている脆弱な社会的保護制度を改善するために、国家・地域・世界レベルの努力を要求している。

バングラデシュ、インド、ネパール、パキスタン、スリランカから125人を超える労働組合員が参加した3月25日のオンライン会合で、組合は、この地域で大勢の労働者が社会的保護制度の対象外になっている現状を報告した。

南アジアではGDPの2%が社会的保護に支出されているが、この比率の世界平均は11%である。

インダストリオール執行委員を務めるFTZ&GSEUのアントン・マークスとSMEFIのサンジャイ・バダブカールが、数カ月に及ぶ過酷なロックダウンなどのCOVID-19封じ込め対策が大きな社会的危機を引き起こしていることを強調し、南アジアにおける普遍的な社会的保護制度の強化を要求した。

「南アジアの大多数のインフォーマル部門労働者は、社会的保護制度の恩恵にあずかっていない。失業手当のような仕組みがないために、特にパンデミック下にあって、多くの労働者が危機に追い込まれている。ネパールやバングラデシュのような国では、社会的保護は援助機関主体という側面が強く、持続可能な制度ではない。労働者は、普遍的で包括的な社会的保護制度のために、より多くの資源を必要としている。社会保障は断片的あるいは慈善的なものであってはならず、権利であるべきだ」とアプールヴァ・カイワール・インダストリオール南アジア地域事務所所長は述べた。

ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は次のように述べた。

「パンデミックで、ネオリベラル・グローバル化モデルの失敗が明らかになった。この危機の影響は不均等かつ不公平だ。社会的保護は、私たちがどんな社会を求めるかに関する政治討論の中核を成す。インダストリオールは、普遍的な社会的保護と世界の安定を求めて闘う。グローバル・ユニオンは、グローバルな社会的保護基金を要求している。社会的保護は人類のために必要不可欠であり、貧困や不平等、社会的疎外、社会不安を防止・抑制する手段だ。社会的保護には、機会均等、ジェンダーおよび人種平等を促進する大きな可能性がある」

ILOは南アジアの社会的保護政策を見直している。南アジアの労働者活動に関するILO専門家のサイイド・スルタン・アーメドは、インフォーマル部門労働者の間で社会的保護を受ける権利に対する認識を促すとともに、団体交渉を利用して組合員の社会的保護を勝ち取るために、労働組合が重要であることを強調した。

「私たちの研究によると、ロックダウン期間中に政府の救済資金を受け取った労働者の割合は33%にすぎない。新しい社会保障法が導入されることになっているので、政府は多くの既存の社会的保護制度を中止した。新しい社会保障法は、多くのレベルでインフォーマル部門労働者を社会的保護制度から除外している。社会的保護制度の設定にあたって十分な女性参画を要求する必要がある」と女性自営労働者連合(SEWA)のシャリニ・トリベディは述べた。

南アジアの製造労働者を対象とする既存の社会的保護法に関する調査で、この地域で社会的保護制度を強化する必要のあることが浮き彫りになった。この研究はタタ社会科学研究所のネハ・ルイスが、インダストリオール南アジア地域事務所でのインターンシップの一環として実施した。

  • スリランカのインダストリオール加盟組織は、最大2年間にわたって給料の60%を支給する失業給付制度を盛り込んだ案を、政府が承認するよう要求している。
  • パキスタン在宅女性労働者連盟は、同国シンド州でインフォーマル部門労働者の社会的保護を勝ち取るために進めている取り組みを共有した。

写真提供:ILOアジア太平洋