アジア太平洋でデュー・ディリジェンスを用いて組合の力を構築

2023年4月4日

グローバルノースにおける人権デュー・ディリジェンス法の制定に対応して、アジア太平洋のインダストリオール加盟組織は、この法律を利用してグローバル・サプライチェーンで組合の力を構築する準備をしている。

「企業の社会的責任は人権および労働者の権利の侵害を防止しておらず、グローバルな組合運動は企業の説明責任の強化を求めて運動している。インダストリオールは、2021年の大会で法的拘束力のある国連条約を要求した。結社の自由と団体交渉権が不可欠なサプライチェーンで、ディーセント・ワークを可能にする環境を作るために拘束力のあるルールが必要だ」とケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は述べた。

2023年1月にドイツのサプライチェーン・デュー・ディリジェンス法(SCDDA)が実施された。この法律の対象は、国内に本社がある従業員3000人(2024年に1000人に引き下げられる予定)超のドイツ企業または外国企業である。

この要件を満たす企業は、自社および直接サプライヤーの事業で人権と労働者の権利の侵害を防止するために年次リスク分析を行う必要がある。適用企業は、人権侵害について十分に知っている場合に責任を負う。

企業は労働者の結社の自由、自由な団体交渉、安全衛生を尊重し、強制労働と児童労働を根絶しなければならない。労働者と組合は、ドイツ連邦経済輸出管理庁(BAFA)で、またはインダストリオールやドイツの労働組合パートナーを通して、侵害に関する苦情を直接申し立てることができる。

「この法律を実施し、事業リスクではなく人のリスクに焦点を当てるようにするうえで、労働組合は重要なステークホルダーだ。組合は、リスク分析や予防措置、是正措置、救済策の実施に関与する必要がある。多国籍企業に対して訴訟を起こすには、侵害を文書化するために職場委員を訓練することが欠かせない」

「だが何より、組合は法律を利用して戦略的な組織化キャンペーンを実施し、交渉力を強化するためにサプライチェーンで強力な組合基盤を構築すべきだ」とドイツの組合IGメタルでグローバル労働組合政策担当部長を務めるクラウディア・ラーマンは、2023年3月29日に「組合の力を構築するための人権デュー・ディリジェンスの利用と理解」に関するインダストリオール・ウェビナーで述べた。

日本政府は2022年9月、責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドラインを発表した。このガイドラインは、規模や部門、直接・間接サプライヤーの別、日本国内外を問わず、すべての企業を対象としている。

法的拘束力はないが、政府は企業に人権方針の公表と、人権に悪影響を与えるかもしれないリスクの確認・評価を奨励している。企業は悪影響を防止または軽減し、人権の悪影響に苦しんでいるステークホルダーに救済策を提供すべきである。

全日本金属産業労働組合協議会(JCM)は政府に対し、労働者・組合を特別なステークホルダーにするよう要請している。JCMは加盟組織に、委員会への参加によってデュー・ディリジェンス・プロセスに加わり、企業の苦情処理・改善メカニズムに関与することを奨励している。

「JCMはデュー・ディリジェンスに関するパンフレットを発表し、それを春闘方針に盛り込んだ。JCMは引き続き、政府がガイドラインを改善して実施を監視するよう要求していく。ガイドラインに効果のないことが判明すれば、日本の組合は法律制定を求めるつもりだ」と平川秀行JCM事務局次長は述べた。

「ガイドラインや法律で既存の労働争議や組合つぶしがすべてなくなるわけではないと思う。団体交渉と協議によって問題を解決するには、交渉技能を高める必要がある。組合は能力改善に取り組まなければならず、経営側は企業の社会的責任、国際労働基準、人権デュー・ディリジェンスに真摯に取り組まなければならない」と髙倉明インダストリオール副会長は述べた。

このウェビナーにはアジア太平洋地域から130人前後の労働組合員が参加した。

カバー写真:モンゴルの敷物工場で稼働中の工業用織機 ©ILO

 

 

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